財産を相続しないためには

財産を相続しないためには

相続の発生は、被相続人の死亡により開始されます。そして被相続人の全ての財産は相続人に相続されます。相続される財産はプラスの財産のみならず、マイナス財産つまり借金も相続の対象です。今回のコラムでは財産を相続しない為の法律的な考え方を確認したいと思います。

相続の基本

相続の基本は相続人の決定にあります。被相続人の一生分の戸籍類を確認する事で相続人を確定させます。相続人の立場により法定相続分が異なります。プラス財産・マイナス財産共に法定相続分で承継されます。ただし司法書士の資格などその個人に特有の権利などは相続の対象となりません。(江戸時代は、身分や位も相続の対象となったようですが時代の変化とともに制度も変化したていますね)

財産を相続しない為の手段

以下の2つの方法があります。
・相続放棄
・遺産分割協議
相続放棄は相続開始後一定期間内に家庭裁判所に申述することで、プラス財産もマイナス財産も相続せず、最初から相続人では無かったことなります。各相続人は単独で相続放棄をすることが出来ます。また、相続放棄の効果は非常に強く債務者に対しても相続放棄したことを強く主張できます。ちなみに一部の財産のみについて、相続放棄をすることはできず、相続放棄した場合プラス財産・マイナス財産を全て合わせて相続しない事になります。
 
一方遺産分割協議の結果、自分が財産を一切相続しない協議が成立したとします。財産を相続しない協議が成立したという事は、当事者間ではプラス財産を相続しないことに成った代わりに、マイナス財産(借金)も相続しないことに成ったと理解できます。しかしながらこの状況は債務者には主張できません。債務者から見た場合には当然と言えば、当然の帰結です。つまり債務者は変わらず法定相続分に従って各相続人に請求可能となります。遺産分割の最大の特徴は相続人全員の合意が必要という事です。相続人を欠いて行われた遺産分割協議は無効となります。この点単独でできる相続放棄とは大きく異なります。
 
上記を確認頂くと分かる通り、一般に財務超過の場合、相続債務から逃れるためには相続放棄の一択となります。債務超過ではなくプラス財産が上回っている場合には遺産分割で債務を相続しないことを決める事でも良いかもしれません。当事者間での合意で可能な点、遺産分割協議は相続放棄よりも手続きは一般的には簡便と言えます。

最後に

今回は財産を相続しない方法という、本サイトの他の記事とは少し切り口の違う観点で相続をとらえてみました。相続しないというのは当事者間でもいろいろの事情がある場合と想像できますが、本記事を参考に個人の事情に当てはめながら具体的な手続きを検討されることをお勧めします。不明な点がございましたらお問合せ下さい。

このコラムを書いた人

司法書士向山昭彦

経歴

  • 2018年司法書士試験合格
  • 2019年1月~2022年12月 司法書士法人勤務 (中野支部所属)
  • 2023年1月 大松法務司法書士事務所開設 (台東支部所属)

相続に関する法律や手続きは、一般の方には分かりにくい内容かと思います。疑問に思われる事、不安に感じることがございましたらいつでもご連絡下さい。

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