売却を見据えた遺産分割協議（換価分割）
始めに
相続した不動産の活用に関してお考えの方は少なくないと思います。住んでいない不動産を所有することで固定資産税がかかったり、相続税を支払う為に不動産を売却するなど、個人個人事情は様々かと思います。所有不動産を売却する際の手続き上の考え方に関して確認してみたいと思います。
法律上の考え方と手続き
前提
亡くなった方（被相続人）が所有した不動産を直接的に売却することはできません。法律上は以下の権利移転が発生しているためです。
１．被相続人から相続人へ相続を原因とする権利移転
２．相続人が売買契約を締結することで買主への売買を原因とする権利移転
登記上も上記の権利変動をなぞるように2つの手続きを行います。
相続による権利移転
相続による権利移転においては、遺産分割協議を行わない場合、法定相続分による権利変動となります。遺産分割協議を行った場合、その合意内容に基づく権利変動となります。遺産分割協議は相続人全員で行う必要があるのでその点注意が必要となります。いずれの場合であってもまずは、この相続による権利移転が発生し、それを示す相続登記が必要となります。
売買による権利移転
相続によって権利を取得した方が売主となり、買主との間で売買契約を締結します。通常はこの売買契約には特約があり、契約締結時ではなく売買代金受領の時に所有権が買主へ移転する内容となっています。
売買契約を見据えた遺産分割協議
通常遺産分割協議を行った結果、所有者を単に一名と定めた場合、売買代金もその所有者として定めた者が受け取る事になります。遺産分割協議を行っていない場合には、相続人全員へ民法に定められた持分に基づき、売買代金が分割されます。この場合、相続人全員が売買に関与する必要があるので、相続人が多数に及ぶ場合には、書類の収集や手続きなどで負担が増す事も考えられます。ここでみなさんに知っておいていただきたい遺産分割方法が【換価分割】と呼ばれる方法です。一言でいうと相続人の一人が不動産を便宜取得し、その売却代金を任意の割合で分けるという考え方です。遺産分割協議書には以下の通り記載します。
第〇条 下記不動産（以下、「本件不動産」という）は、換価分割を目的として相続人○○が便宜取得し、その売却代金から本件不動産上に残置された動産の撤去費用、仲介手数料、登記費用等本件不動産の売却に必要な一切の費用、他の相続人への振込手数料を控除した残額を各相続人が以下の割合で取得する。
（対象不動産）
所在 台東区台東一丁目
地番 〇番〇
地目 宅地
地積 〇〇〇．〇〇平方メートル
（売却代金の分割割合）
相続人A ２分の１
相続人B ４分の１
相続人C ４分の１
最後に
遺産分割協議を行う事は簡単に言えば、相続人全員が相談して財産を分けることです。本記事にあるように不動産の売却を見据えている場合には、換価分割を盛り込むなどする事で、その後の手続きを格段にスムースにできる場合があります。換価分割は一つの例ではありますが、個々人の事情やその後に見据えている状況に応じて、遺産分割等の相続手続きについて専門家として助言をさせて頂く事が可能です。お悩みの事項がございましたら是非一度ご相談を頂ければと思います。
このコラムを書いた人
司法書士向山昭彦
経歴
- 2018年司法書士試験合格
- 2019年1月～2022年12月 司法書士法人勤務 (中野支部所属)
- 2023年1月 大松法務司法書士事務所開設 (台東支部所属)
相続に関する法律や手続きは、一般の方には分かりにくい内容かと思います。疑問に思われる事、不安に感じることがございましたらいつでもご連絡下さい。
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