制限行為能力者と相続

制限行為能力者と相続

相続について考える機会は多くないと思います。しかし相続は必ず発生します。病気、事故、寿命・・・。突然発生した相続にどのように対応するべきでしょうか。相続人に未成年者、認知症の高齢者が含まれる場合には遺産分割協議にも注意が必要です。本コラムでは、制限行為能力者が遺産分割協議を行う際の手続き上の考え方を記載したいと思います。

制限行為能力者とは

未成年者や成年被後見人が制限行為能力者にあたります。被保佐人や被補助者も法律上制限行為能力者に当たります。本記事では内容を絞る為、未成年者及び成年被後見人に絞って話を進めたいと思います。未成年者は皆さんもよくご存じだと思いますので、その定義は割愛したいと思います。成年被後見人は認知症などで判断能力が著しく落ちてしまった人で家庭裁判所で後見開始の審判を受けた人となります。本人保護の観点から、いずれも法律上の行為を行う場合、大きな制限があります。遺産分割協議も当然、法律上の行為となります。

遺産分割協議とは

被相続人の財産は相続開始と共に相続人の共有状態となります。その共有状態を相続人全員の話し合い(協議)によって、誰の財産かをはっきりさせる事、それが遺産分割協議です。ここでのポイントは相続人【全員】が遺産分割協議に参加する必要があるという事です。一部の相続人を除いて行われた遺産分割協議は無効です。では制限行為能力者が相続人の場合、どのような扱いになるのでしょうか。

成年被後見人と遺産分割協議

認知症などで成年後見開始の審判を受けた成年被後見人は、遺産分割協議に参加することはできません。遺産分割の詳細を理解することが難しいと考えられているからです。この場合、遺産分割協議には成年後見人が代理して参加します。遺産分割協議書には後見人が実印で押印すことに成るわけです。遺産分割協議を行う為に、成年後見開始の審判を受けるといったケースもあります。一点注意が必要なのは通常に行う遺産分割協議と成年後見人が参加する遺産分割協議は、大きく異なる点です。前者は基本的に相続人の自由に内容を決めることが出来ますが、後者は成年被後見人の財産保全の観点から成年被後見人の法定相続分を確保できない遺産分割協議に成年後見人は合意できません。

未成年者と遺産分割協議

未成年者が相続人にいる場合はどうでしょうか。法定後見人(親権者)が未成年者に代わって遺産分割協議に参加します。しかし一定の場合、それが出来ません。それは親権者と未成年者の両方が相続人となるケースです。親権者と未成年者との利益が衝突する可能性がある為です。この様な事態を防ぐ為、未成年者に代わって特別代理人が遺産分割協議を行います。この特別代理人は家庭裁判所により選任されます。

最後に

相続に直面するシーンは個々人によって大きく異なります。今回のケースに該当する方は、本コラムを基礎に各々の事情に当てはめて今後の手続きをご検討ください。不明な点が有ればお問合せ頂ければと思います。

このコラムを書いた人

司法書士向山昭彦

経歴

  • 2018年司法書士試験合格
  • 2019年1月~2022年12月 司法書士法人勤務 (中野支部所属)
  • 2023年1月 大松法務司法書士事務所開設 (台東支部所属)

相続に関する法律や手続きは、一般の方には分かりにくい内容かと思います。疑問に思われる事、不安に感じることがございましたらいつでもご連絡下さい。

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