相続は「争族」と表現されるほど、もめるのが一般的です。
一見仲睦まじい家族でもひとたび相続が始まれば感情がむき出しになり、円滑に進まないのが相続の特徴です。
ではなぜそうなるのでしょうか?
当センターでは争族を回避することを最大の目的として活動しております。
今回は、「もめない相続のためにはどうしたらいいのか」についてのコラムです。
もめない相続のための争族対策 その1
法律を知る
概論
子供が複数人いる場合、かわいがっている子とそうでない子、またはかわいさに順番があるのが一般的ではないでしょうか。
場合によってはA子はかわいいけど、B子は嫌い、なんて方もいるでしょう。
人間なので感情があって当たり前です。
ただし、感情にかまけて好き勝手に遺産を按分しようとすると、そこから争族が始まるのです。
自分が築いた、または持っている財産なんだから、自分の勝手にするのが当たり前じゃないか!と考えているあなた、争族確定です。
日本国には相続法(民法)があります。
あなたがいくら頑張ったところで法律には勝てないのです。
そんなバカな!と理不尽に感じるかもしれませんが、これが現実です。
思い通りに遺産相続を進める目的で財産按分を決めて遺書をしたためたことで、却ってあなたの意向が反映されなくなる可能性が飛躍的に高まるのです。
それはなぜでしょうか?
法定相続分
ここからは法律の説明です。
少し相続に興味を持ち、調べたことがある方であれば、「法定相続分」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。
法定相続分とは民法900条に定められる遺産を相続する割合のことです。
相続人が複数人いる場合、遺言などによって被相続人(あなた)からこの法定相続分と異なる指定がなされていなければ、この法定相続分に従って遺産が分割されるのです。
実際の場面においては、法定相続分は遺産をどのように按分するかの相続人間での話し合い(遺産分割協議)の際の「基準」として用いられます。
ここで鋭いあなたは、なんや、ただの「基準」やろ?と思ってドヤ顔されたかもしれませんが、大正解です。
法定相続分が気にいらなければ抗せます。
ここで具体例です。
あなたには愛する妻に、大好きなA子と、憎たらしいB子の3人の家族がいます。
この場合、法定相続分は妻1/2、A子1/4、B子1/4です。
しかし、あなたはB子が憎たらしいのでB子には1円たりとも遺産を渡したくない!
B子の法定相続分は妻とA子で山分けさせるのだ!と息巻いてもそれは無駄なのです。
さあ、なぜそれができないのでしょうか?
遺留分
真打登場です。
遺留分様です。
法定相続分は知っている方でも遺留分を知らない方は多いのではないでしょうか。
遺留分とは民法1042条に定められる、あなたの遺産のうち、一定の相続人(遺留分権利者)に法律で保証されている権利(持分割合)のことです。
法定相続分と異なり、「基準」ではないのです。
遺留分は、被相続人(あなた)が自分の財産をどのように按分するかを決める自由を制限する相続人の権利で、遺言や多額の生前贈与があった場合などに行使されます。
面白くなってきましたね。
たとえば、被相続人(あなた)が遺言で「遺産は妻とA子に全て相続させ、憎たらしいB子には1円も相続させない!」と書き残していたとします。
残念ながら、このような場合においても、遺留分を有する憎たらしいB子は、妻とA子に対して、「私には遺留分があるのだから、その分をお金で支払ってちょうだい、払わなかったら訴えるわよ!」と主張することができる、訴えられたら遺留分を取り戻せるのです。
実際に憎たらしいB子は妻とA子を訴えるでしょう。
B子が憎たらしいたる所以ですね。
常に期待に応える子なんです。
そうなんです、遺留分は最強なんです!
あなたの意志などお構いなしなんです!
関係ないんです!
法定相続分の「基準」なんて生易しいものではないのです!
抗せないのです!
では泣く子も黙る最強の遺留分とはどの程度なのでしょうか。
あなたには愛する妻に大好きなA子と憎たらしいB子の3人の家族がいます。
遺留分は法定相続分の1/2です。
この場合は妻1/4(1/2 × 1/2)、A子1/8(1/4 × 1/2)、B子1/8(同左)です。
残念ながらあなたがどんなに会心の遺言書を作成して、憎たらしいからB子へは1円もやらん!と息巻いても無駄なのです。
不本意ながら1/8は憎たらしいB子へ渡ってしまうのです。
もめない相続のための争族対策 その2
家族でじっくり話し合う
上記にて説明した法定相続分と遺留分についてよく理解して頂けたと思います。
どんなにあなたが愛する妻とかわいいA子をえこひいきし、憎たらしいB子を迫害したい、という気持ちが強くても、遺留分がある以上は限界があるのです。
あなたにとっては理不尽ですねえ。
さあ、この遺留分という法律で定められた最強の権利があることを知ったあなたはどうしますか?
後顧に憂いを残してまで強硬策にでますか?
あなたがどんなに権力を持っていても、財力を持っていても、腕力を持っていても、遺留分には抗することはできないのです。
納得できないあなたはどうすればいいのでしょうか?
まずは生きているうちに妻、A子、B子の4人でよく話し合いましょう。
誠意をもって話せば、憎たらしいB子とも分かり合え、老い先短いあなたに救いの手を差し伸べるかもしれません。
いままでいがみ合ってきたことがまるでウソの如く、B子は、「お父さん、長生きしてね、なんでも言ってね」と豹変するかもしれません。
そうなれば遺留分に限らず、法定相続分までB子にやろう!家族みんな公平に遺産を相続させよう!という気になるかもしれません。
めでたしめでたし、これにて一件落着です。
もめない相続のための争族対策 その3
勝手に遺言を書かない
名残惜しいですが本コラムもいよいよ最後の章です。
上記その2で生前に家族でじっくり話し合うことを決めたあなたには余計な章ですので読み飛ばしてください。
相続で一番揉めるのは、被相続人(あなた)が勝手気ままに誰にも話さずにおかしな遺言書を作成した場合なんです。
憎たらしいB子と氷解する努力もせずに、遺言書を作成し、「遺産は妻とA子に全て相続させ、憎たらしいB子には1円も相続させない!」と身勝手で強硬な内容を書き残したとします。
あなたが憎んでいるB子は当然あなたのことを憎んでいます。
バカだったB子は実は賢く、遺留分のことを知っています。
果たしてB子は大人しくあなたの遺言通り、あなたがB子を憎んでいたのを知っていたから遺産は要らないわ、と大人しく引き下がるでしょうか?
引き下がらないですよね。
お父さんは最後の最後まで私を迫害したんだわ、もう許せない!と戦闘開始です。
B子が憎んでいたのは、本来あなただけだったのに、あなたの身勝手な遺言書のせいで矛先は妻とA子に向かいます。
せっかくB子が家族で唯一憎んでいたあなたが他界したのに、今度は無風だった妻とA子との関係も悪化するのです。
最悪ですよね。
このような事態を避けることが最愛の妻とかわいいA子に対する責任であり、義務ですよね。
遺言書を作成する場合は、勝手に作成せず、よ~く家族(相続人)で話し合いましょう。
それが争族を美しい相続にする唯一無二の方法であると心得ましょう。
もめない相続対策について書きましたがいかがでしたか?
円滑な相続には、税金対策よりも、家族対策が最重要なのです。
家族対策なくして税金対策を施しても本末転倒です。
感情的にならずに、現実的な対応を心がけましょう。
当センターでは税金対策や相続手続に限らず、みなさまが円滑に相続できるよう、残されたご家族の絆がより一層強固になるよう、お手伝いしますので、ぜひご相談ください。
このコラムを書いた人
センター長冨田 豊久
経歴
- 三菱地所リアルエステートサービス(現)
法人向け売買仲介・コンサルティング - 三菱UFJモルガン・スタンレー証券(現)
不動産ファンド組成・ノンリコースローン貸付 - みずほ証券
不動産ファンド組成・CMBS組成・REIT上場・自己資金運用 - シン不動産DX株式会社設立
20年以上に渡り、個人、法人のお客様と一室数百万円のマンションから一棟1,000億円超のオフィスビルまで合計3,000億円以上の不動産取引に携わりました。お客様の想いを大切にする、お客様に損をさせない、を徹底します。不動産・金融のプロフェッショナルとしてお客様が満足するサービルを提供することをお約束します。
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