遺産分割協議について

遺産分割協議について

相続人間で相続財産の具体的な帰属を決定する話し合いが遺産分割協議です(相続人が一人であればこの協議は必要ありません)。遺産分割協議を証明する書面として遺産分割協議書を作成します。実務的には実印を押印し、銀行・法務局といった各機関への手続きにあたっては押印者の印鑑証明書の提出が要求されます。相続人の確定から遺産分割協議に至る過程を確認してみましょう。ちなみに当事者間の遺産分割協議が話し合いで整わない場合には、家庭裁判所における調停等を必要とすることに成ります。

前提となる民法の規定

相続人の確定

遺産分割協は相続人全員で行う事が必要です。そして全員が合意することが必要です。法定相続持分による発言権の違いなどはありません。相続人を欠いて行われた遺産分割協議は無効となります。では誰が相続人となるのでしょうか。民法の定める相続人は以下の通りです。
配偶者は常に第一順位の相続人となります。
第一順位:子(法定相続分1/2)
第二順位:直系尊属(法定相続分1/3)
第三順位:兄弟姉妹(法定相続分1/4
 
例えば、配偶者(A)存命で子供がおらず、被相続人の両親は既に亡く、被相続人の弟(D)が存命の場合、相続人・その相続分は相続人:A(3/4)及びD(1/4)となります。

相続人を確定させる為、具体的には被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍の全てを収集することが必要となります。相続人が第三順位の相続人になる場合には、兄弟姉妹全てを確認するために被相続人の全ての戸籍に加えて、その両親の全ての戸籍も集めることが要求されます。場合によっては明治の頃の戸籍を取り寄せる必要もあります。複数の手続きを同時に行う事を想定する場合には法定相続情報証明を作成する事のがお勧めです。

遺言書と遺産分割協議の関係性

被相続人が自身の最期の意思として【遺言書】を残した場合、遺言書の内容に基づき遺産の分配を行う事が基本となります。遺言の形式は、自筆証書遺言(手書きの遺言書)・公正証書遺言(公証人が作成する遺言書)がその代表例です。遺言書がある場合でも関係者合意のもと遺産分割協議を行う事は可能です(自筆証書遺言・公正証書遺言を問いません)。遺言書で包括遺贈を受けた者(全財産の1/2というような持分的遺贈を受けた者)は遺産分割協議に参加する権利を有しています。

相続分の譲渡/相続放棄・欠格・廃除/数次相続

●相続分の譲渡とは相続人としての地位そのものを譲り渡すことが出来る制度です。相続分の譲渡を受ける事ができるものは相続人に限られず、全くの第三者であっても問題はありません。相続分の譲渡は有償(相続分の売買)・無償(相続分の贈与)いずれも可能です。相続分の譲渡を受けたものは相続人としての地位そのものを取得することになるので、遺産分割協議にも参加可能です。
 
●相続放棄・欠格・廃除は各々制度趣旨や内容は違いますが、相続関係から離脱するという意味では共通しています。相続人ではなくなる為、遺産分割協議に参加することはできません。
ただし、代襲相続が発生する場合には、代襲相続人は遺産分割協議に参加する事が可能です。
代襲相続とは、被相続人死亡時その相続人がすでに死亡している場合、その相続人に子供がいれば、そのものが相続人となります。簡単にいうと被相続人の孫が相続人といったケースがその代表例となります。

●数次相続と遺産分割協議
遺産分割協議がなされないまま、相続人が亡くなってしまった場合を考えてみましょう。
例)夫婦(A・B)の間に子1(C)人がおりCその子(D)がいるケースで、夫(A)が亡くなった場合を考えてみましょう。当然B及びCが相続人となります。ところが、B,C間で遺産分割協議がなされないままCがなくなってしまったような場合です。この場合A死亡に際しての遺産分割協議の当事者はB及びDとなります。これはいわゆる代襲相続とは異なります。(代襲相続はA死亡前にCが亡くなっている場合の相続形態を意味します)B及びD間での遺産分割協議書には、DはCの相続人で有る事を明記します。

遺産分割協議を行う為の条件・効果・方法

必要となる意思表示/特別代理人の関与/解除・取り消しの可否

●遺産分割協議には、その内容を理解した上で行うという意思が必要とされます。高齢化が進む昨今、相続人が高齢者であったり、代襲相続のように相続人が未成年者であるケースが少なくありません。相続人が認知症の場合、その意思が認められず、遺産分割協議は無効となります。このような場合、成年後見制度を利用し、認知症である相続人の後見人が遺産分割協議を行う事になります。成年後見人は成年被後見人である相続人の権利を確保することが考え方の根本となりますので、必ずしも他の相続人と意見が一致するとは限りません。また成年後見を一度開始すると遺産分割協議を行った後も引き続き成年後見人による後見は続行されることになり、途中で後見制度の利用を中止することはできません。

●未成年者は相続人であっても遺産分割協議を行う事が出来ず、家庭裁判所に特別代理人選任を請求することになります(通常、未成年者の親権者が諸々の子の行為を代理しますが、夫が死亡し,妻と未成年者で遺産分割協議をする行為、複数の未成年者の法定代理人として遺産分割協議をする行為については親と子供の利益が衝突(利益相反)するため特別代理人が選任される訳です)。

●一度なされた遺産分割協議を解除することが出来るのでしょうか。詐欺や脅迫を受けて行った遺産分割協議は取り消すことが認められます。また、相続人全員の合意がある場合に既に行われた遺産分割協議を解除することが可能です。一方、共同相続人において遺産分割協議が成立した場合、相続人の一人が遺産分割協議において負担した債務を履行しないときであっても、その債権を有する相続人は、民法541条によって遺産分割協議を解除することはできません。

遺産分割協議とマイナス財産の承継

相続が発生した場合、マイナス財産も相続されることになります。分かりやすく言うと借金も相続されるという意味合いです。では遺産分割協議においてこの借金はどのような扱いとなるのでしょうか。相続債務について考える際わかりやすいのは、債権者側の見方で考えてみることです。例えば、相続債務を相続人間の話し合いで特定の債務者が引き受けることが決定された場合、この相続人に債務返済の能力がなければ、債権者は不利益を被ります。このような考え方から相続債務について相続人間で話し合った内容は相続人間では有効な協議となりますが、債権者は変わらず法定相続分に応じた債務を請求をすることが可能です。ただし、相続放棄がなされている場合には、債権者は相続放棄をしたものに、債務の請求をすることはできません。

遺産分割の方法

遺産分割協議は、大きく以下3つに分類されます。

-現物分割:預貯金、現金、不動産を相続に間で物理的に分割する方法
-代償分割:一部の相続人が遺産を承継する代わりに、他の相続人に対して代償金を支払う。
-換価分割:相続財産を売却した後、その代金を相続人間で任意の割合で分ける。

遺産分割協議書の具体的な記載方法

作成上の注意点

-出来る限り具体的に記載する
-間違いの無い様に記載する
-誰が読んでもわかるように記載する
上記のように当然のことを当然として記載することが必要です。例えば銀行口座を特定する口座番号や支店名が間違っている場合、手続きに支障をきたす場合があります。

記載上の注意(預貯金・不動産)

遺産分割協議書が複数枚の紙面に及ぶ場合には、割印をします。製本テープを使う場合にはテープと紙面にまたがるよう押印をします。

●銀行預金の相続
以下のように記載します。
・A銀行株式会社B支店普通預金 口座番号12389 はXが相続する
複数の相続人が相続する場合には具体的に誰がいくら承継するかを記載します。相続する人が1名の場合には金額について記載する必要は必ずしもありません。
 
●不動産の相続
登記簿記載の不動産を特定できる情報を記載する必要があります。不動産を特定する情報とは以下の通りです。
土地:所在・地番・地目・地積
建物:所在・家屋番号・種類・構造・床面積

具体的な記載例

           -遺産分割協議書-
 
共同相続人である私達は次の相続について、下記の通り遺産分割の協議をした。
 
被相続人の最後の本籍 東京都文京区○○町1番地1
最後の住所 東京都文京区○○一丁目1番1号
氏名 文京太郎兵衛
相続開始の日 令和5年5月1日

             -記-
1.相続財産中、次の不動産については、文京太郎が相続する。
 
一棟の建物の表示
 所 在  江東区北砂一丁目11番地
 建物の名称   ABCハイツ
専有部分の建物の表示
 家屋番号  北砂一丁目11番の11
 建物の名称 11
 種 類 居宅
 構 造 鉄筋コンクリート造1階建
 床面積 1階部分 21.11㎡
敷地権の表示
 所在及び地番 江東区北砂一丁目11番
 地 目 宅地
 地 積 100.00㎡
 敷地権の種類 所有権
 敷地権の割合 10分の1
 
2.相続財産中、次の預貯金については、文京次郎が相続する。
株式会社A銀行●支店 普通預金 口座番号○○
 
3.本遺産分割協議書に記載のない遺産が後日判明した場合、その遺産は文京次郎が相続する。
以上の協議を証するため、この協議書を作成し、各自署名押印のうえ、文京太郎、文京次郎が各1通を保有するものとする。
 
令和5年10月1日
 
住 所 東京都文京区○○一丁目2番3号
氏 名 文京太郎
署 名      ㊞
------------------------
 
住 所 東京都文京区△△一丁目2番3号
氏 名 文京次郎
署 名      ㊞
------------------------

最後に

遺産分割協議に至るまでの一連の流れ、考慮すべき事項、具体的な分割協議書の記載例をご確認頂きましたが如何でしょうか。相続は個人個人異なる要素が強く、画一的に進めることは難しいと思いますが、先ずは基本を押さえたうえで個別の事情を反映させていくと良いと思います。手続き、書類の作成でお困りのことがございましたら、当センターへご相談頂ければと思います。

このコラムを書いた人

司法書士向山昭彦

経歴

  • 2018年司法書士試験合格
  • 2019年1月~2022年12月 司法書士法人勤務 (中野支部所属)
  • 2023年1月 大松法務司法書士事務所開設 (台東支部所属)

相続に関する法律や手続きは、一般の方には分かりにくい内容かと思います。疑問に思われる事、不安に感じることがございましたらいつでもご連絡下さい。

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